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ワークライフバランスという欺瞞

最近、「ワークライフバランス(WLB)」という言葉が流行っている。いままで、仕事ばかりして過重労働などの問題から労働災害過労自殺等を招いてきた働き方を見直して、仕事とプライベートのバランスをとりましょう、という取り組みのことだ。

 

私が働いている会社でも、社員の過重労働が激しく、メンタルに不調をきたす人が増えてきたという問題を受けて、このWLBへの取り組みが盛んになってきた。その対策として、フレックスタイム制の導入、テレワーク環境と制度の導入が行われた。しかし、よくよく考えると、フレックスタイムやテレワークが本当にWLBの実現に寄与しているのかは甚だしく疑問である。

 

特にテレワーク制だが、これは社外からリモートで会社の環境にアクセスできるようにすることで、働く時間の自由度を高め、そのことでプライベートの時間をもっと自由に確保できるようにするという名目の制度となっている。テレワークを活用するメリットとしては、

  • 個人の生活リズムに合わせて、好きな時間好きな場所で仕事ができる
  • 勤務時間にとらわれないので、自由時間が確保できる

ということを喧伝しているのだが、はたしてこれが本当にWLBになっているのだろうか。

 

実は、テレワーク制がWLBの実現よりも社員の拘束力強化を主眼にしているのではないかと疑わせる発言が管理職者の口から漏れたことがある。そのとき、その管理職者は、「テレワーク環境が整備されたことで、24時間365日いつでもどこからでも仕事ができる環境になりました」と発言をした。これは明らかにWLBの実現に反する意図での本音の発言だと思う。

 

また、WLBの実現に関してさほど真剣に考えていないのでは、と疑わせる要因は他にもある。それは、タイムカードによる日次での勤務時間管理の継続だ。WLBによって自由な働き方を実現するのであれば、日々の勤務管理をタイムカードを打刻することで行う必要性はなくなったと言える。勤務管理は必要であるが、時間管理をする必要性はなく、仮に時間管理が必要であっても日々の管理ではなく月間所定労働時間に対する実績管理でも良いはずだ。しかし、社員はいまだに毎日の出社時にタイムカードを打刻し、帰宅時に打刻する。結局、タイムカードの打刻は出社しなければできないので、ほとんどの社員はこれまで通り定時前に出社し、定時後に残業をこなして帰るという働き方を継続している。

 

では、テレワークが利用されていないかというと、それなりに利用もされている。例えば、このブログ記事を書いている今日(9/24)、私はテレワークで仕事をしている。ただ、テレワークの場合は、

  • 事前に申請の上で上長の許可が必要
  • テレワーク時には残業が認められない

という制約があって、かなり事前に計画しておかないとテレワークは使いづらい。それになにより残業が認められないというのは、テレワーク利用を躊躇させるに十分な制約である。なぜ、残業を認めないかといえば、先に書いたようにタイムカードによる勤務時間管理の対象外となるからだ。

残業が認められないから、テレワークのときは所定労働時間以内にその日の仕事を終わらせられるかと言えば、なんだかんだで時間外労働を行ってしまっているのが実態だ。となると、テレワーク時の時間労働はすべて「サービス残業」ということになる。そう考えると、テレワークを導入したことがWLBの実現を目的にしたものでなく、勤務記録上は時間外労働を削減しつつ、記録に残らないサービス残業を助長することを目的としたものなのではないか、という疑問が残るわけである。

 

WLBの実現は社員の健全な働き方という意味では大切な施策である。しかし、WLBを隠れ蓑にして社員をより強固に拘束しようという考えが経営側にあるのではないだろうか。なにより、システム上の仕組みや環境ばかりを整備したことで、あたかもWLBが実現できるかのように主張するのは欺瞞なのではないだろうか。システムや環境よりも正しい制度を整備することを優先しなければ、真のWLB実現とはいえないのではないか。

 

まあ、愚痴ばかり言っても仕方がない。現状の仕組みの中でWLBを実現するには、会社の取り組みに期待してはいけない。自分の人生なのだから、自分の才覚でWLBを実現しなければならない。やはり、働き方というのは他人に押し付けられるのではなく、自分の考えで決めるものなのだ。